見直しの住居学12:自然の素材を使おう

自然の素材を使おう

節もひびも美しいおおらかな心で使ってこその自然素材

合板やビニールクロス、接着剤や塗料などの化学物質がシックハウスの原因であることが明らかになると共に自然の素材が見直されてきました。それ自体は喜ばしいことです。自然素材は有害物質を放出しませんし、素材そのものに呼吸する機能があるため、湿気の調節ができるなどの利点があります。

少し節のある杉の柱を使った自邸の畳リビング。しかしいい点ばかりではありません。傷が付きやすく、反ったり割れたり、ひびが入ったり。
色も模様もバラバラで品質が一定ではありません。ですから自然の素材を使う場合、こうした特徴を欠点とみなさず、素材の個性として、容認する大らかさが必要となります。わずかな傷やひび、節や色むらがあったりすると「品質が悪い、欠陥だ」とクレームにする建築主も時折いると聞きますが、そのような建築主には自然の素材を使った住まいではなく、工業化された合板の住まいがふさわしいのではと思っています。

松の木漆喰の住まい
自然素材でできた玄関小溜まり


【写真左】松の木を天井、床、腰壁に、壁は漆喰の住まい。
【写真右】自然素材でできた玄関小溜まり。天井は丸竹を並べています。

木の柱は乾燥して小さな割れが入るのは当たり前であり、節もあって当然。節なしを無地として尊び、4面に節のない柱を四方無地の最高級品として自慢する工務店さんもいるようですが、小さな節くらいならあっても木の耐力には変わりはなく、節のあるなしでランク付けするのは山の木に対して失礼だと思っています。

福島県の舘岩村で、樹齢80年、高さ30mの赤松の伐倒を見る機会がありました。木こり職人が木の精霊に御神酒を捧げ、感謝と共に伐倒。赤松が倒れる瞬間には、居合わせた誰もが荘厳な雰囲気に包まれました。この伐倒を目の当たりにして、木を大切に使おうと、それまで以上に強く思いました。自然の素材は生きています。それを充分に分かった上でみなさんにも使っていただきたいと思います。いつまでも変わらずにきれいなモノなど自然界にはありはしないのですから…。

自然素材を使用した施工事例をご紹介
天井に丸竹を敷き並べた玄関
カラ松と珪藻土を使ったリビング


【写真左】バリ島の家のイメージで天井に丸竹を敷き並べた玄関。
【写真右】小さな節のあるカラ松を天井と腰壁に、壁に珪藻土を使ったリビング。